- 中村タイルのこと
『ありがとう!』と言われた 【タイル職人】という しごと (開発事業部編)
タイル張りは【哲学】だ!
正しさとは、不完全性とは
それがなにかを見てつけてくれるのが【タイル張り】である。
うっせぇわ。。といった あなた! 最新の流行は当然の把握ですね(笑
これはタイル業界で約30年やってきた私のひとつの結論です。
あなたが思うより健康な コーゾーです。
前回までのブログを読んでいただいた あなた ホントにありがとうございます。
まだ読んでいない あなた ここにリンクを張っておきますのでよろしければ、こちらからどうぞ
nakamuratile.hatenablog.com
前回までのあらすじは、新婚旅行から帰ってきたら異動となり、そこで出会った【INAX水野さん】に、一からしごとのイロハを教えて頂いたところで力尽きました。(水野さんから連絡頂き、照れくさい次第です)
今回はここから
なかなか【タイル職人】出てこないけど、どうなってんねんと、ご心配のあなた!
ようやく、タイルの職人さんと私の格闘の幕が切って落とされます。
時は20世紀最後の年、2000年 ミレニアムとも呼ばれ、当時はサザンの【TUNAMI】が大ヒットで年が始まり、パソコンの誤作動問題やオカルトなども取沙汰されましたが、この年は私にとっても大きな出来事が起こります。
長女が誕生します。
真夜中に破水した相方を病院まで送り届け、そのまま分娩室に入り、ほぼ強制的(事前に打診なし)に立ち会いとなりました。
命を産み落とそうとする女性の激烈な姿を目のあたりにして、オロオロするしかない自分の非力さに眩暈を感じたこと、出産後に出された食事を私がすべて食べてしまって、看護師さんにえらく怒られたことを、今でも記憶しております。
その後、恩師の水野さんはLIXIL(旧INAX)へと帰任され、あとを任されたのが私でした。
水野さんが帰任されてから、当社に以前からあった【工事部】というタイルを張る工事部門と、私が所属する住宅市場課を合併し、新たに【開発事業部】として立ち上げ、そこのマネージャーとして就任します。
私は、そこで初めて当社に大昔から所属している【タイル職人】さん達と一緒に しごと をすることになります。
開発事業部としての船出は順調でした。
パートナー企業としてのINAXから支援が大きく、顧客となる住宅会社や大手デベロッパーなどを共同で開拓し、ようやく取引が軌道に乗り始めた頃でもありました。
私のお客様は注文住宅を建築する住宅会社が主でした。
家を建てるお客様(お施主様といいます)が住宅会社(当社顧客)と契約され、どのような家を建てたいのかを、お施主様と設計士さんとで協議しながら図面化していきます。
そのなかで、外装や室内にもタイルを張ってみたいとか、メンテナンスが極力必要のない耐久性の高い素材を使いたいなど、タイルのご用命を頂いた段階で、私に相談や依頼がやってきます。
そこで、私はお客様のご要望に応じた内容の商品をご提案してまいります。
はっきりとイメージが固まったお施主様もいらっしゃれば、ぼんやりとしていて、自分の家に合う商品はどれなのか?プロとしての意見を求められることもあります。
ここで私の重要なミッションは、受注した工事を【顧客の期待以上の仕上がり】で完成させることでした。
そのために大切なことは・・・
ポイントが3つあります。
私なりに解説させて頂きます。
ここからは当社の社員に向けて書いてます(笑
一つ目のポイント
提案は正解主義ではありません!
だからこそ、自分の知識と経験と知恵を活かして、お施主様が求めておられる先にあるモノにたどり着き提案出来たときに、成約というご褒美がまっております。
ここで一つだけ、私が人生の師匠としている、ある工務店の社長さんのことばを紹介させてください
家を建てるときに考えなければならないことは、その時に必要なものと、将来必要になるものが違ってくる。お施主さんは今必要なものは、しっかりと見えているが、将来必要になるモノに気づいておられない場合があるので、そこをしっかりと説明し理解していただいたうえで、何を提案出来るかが腕の見せ所である。
私が自宅をリフォームしようと相談したときに言われたことばでした。
【最新の流行は今だけのモノ】私がお客様にご提案するときに心掛けていることです。
すいません 長くなりました。
ハナシを戻します。
二つ目のポイント
選んでいただいたタイルをお施主様のイメージ通り、期待以上に仕上げるために下準備に最大限の労力をかける。
家を建てるということは、大工さんを主体として約30職種ぐらいの職人さん達によるコラボレーションになります。
各職種の専門家である職人さんたちが、次工程へと自分のしごとを引き継いでいきます。
そのなかで問題が発生してまいります。
設計図は完全ではないということです。
図面を読み取る力量の差が、家の完成度にも影響を及ぼします。
ここでの私の役割は、自分が提案し、ご依頼をいただいたタイルを美しく仕上げるために必要な下準備を、前工程の職人さんたちに準備していただくことになります。
実はこの打ち合わせが一番重要だったりします。
この段階でしっかりと汗かいておくことが、仕上がりに大きな影響を及ぼすことになります。
今では痛いほど、この段階の重要性を身に染みて理解しておりますが、しごとを覚えたての私は、何度も過ちを繰り返し、お客様や関係業者、会社、職人さんに迷惑をかけてしまったこと、失敗から多くのことを学んだことを思い出します。
この段階の手抜きは、お客様だけでなく関係業者の信用をも失墜し致命傷になるということを幾度も経験してまいりました。(しつこいけど繰り返しておきます!当社社員のために
最後のポイント
そのしごとに必要な技量を見極め、その技量を持った職人に任せる。
実際にタイルを張っていただくのは職人さんであります。
よーやくここで【タイル職人】登場となります。
なんだかんだ言っても、仕上がりの出来栄えを左右するのは、職人さんの技量によるところが大きいです!
ご存じない方がほとんどだと思いますので少しご説明させてさせて下さい。
建築業で従事されている【職人】といわれる しごと は大半が一人親方と言われる個人事業主になります。
所属している会社はあれど、社員や契約社員とは違い、工事を自分で請け負う事業主なのであります。
そのため、1件あたりの工事金額が自分の請負金額(給料)となり、一日の作業量が多ければ多いほど実入りが大きいということになります。
もう、頭の回転の良い方はお気づきだと思いますが、綺麗な仕上がりを目指し丁寧にゆっくり張る職人と、自分の稼ぎを優先して急いで荒く張ってしまう職人とでは、前者が損をし、後者が得をするのではないのか?
それはとても不公平な請負制度になっているのでは、と考えられる方もいらっしゃると思います。
実際はその通りでして、これについては論理的な反論はございません。
正直申し上げますが、私が入社した30年前はそういった職人さん達も見受けられました。
では、現在はどうか?
少なくとも私の廻りには、そーいった自分の利益だけを優先している職人はおりません。
なぜか?
自分の利益を優先し、お客様と対立関係の立場をとってしまえば、短期的な利益は確保出来たとしても、長期的な流れの中では誰からも必要とされず淘汰されていくのは、自然な社会の仕組みなのだと思います。
私のしごとは、お客様がタイルに期待した価値以上を提供することで、満足していただいた対価の指標として、売上や利益がございます。
ここを間違って自分達の利益を優先してしまうと、じっくり時間をかけて提案し、一枚一枚手間をかけて丁寧に仕上げていくことが出来なくなります。
どれだけコトバ巧みに商品を売ったとしても、お客様が満足いただけないしごとは、信用を失い自然と淘汰されていいくこととなります。
そーならないための、私の役割は【全員の利害の一致】でした。
お施主様、住宅会社、職人、会社、わたし、この循環ですべての利害関係を一致させれば しごと はうまくいくと考えます。
書いてみれば至極当然のことですが、これが自分のしごとになった途端に人は変わります、昨対はどうだ、利益率は、コストは、と目的が売上や利益に置き換わってしまうのです。
そーならない為に理念というコトバがあるのだと思います
当時はそこまでの意識高い系ではございませんでした(笑
ただ、自分達のしごとは後々ずっと形となって残るしごとなので、その責任感を持ってやっていくために、お施主様にお会いすることで、この方が住まれる家なのだなという実感と責任感を持つことが出来ました。
幸い注文住宅を主としていたこともあり、当時は地鎮祭、上棟式などの行事の合間にタイルのサンプルを持って打ち合わせにお邪魔したり、工事中に10時や3時のおやつタイムにお施主様が差仕入れを持ってきていただけることもありました。
お施主様との距離が近かったこともあり、工事中の現場に行くとお施主様と当社の職人さんたちが談笑しており、タイルが一部仕上がった状態を見て頂き、期待以上の仕上がりだったときなどは、
【ありがとう】
とお施主様から職人さんが言われている光景を何度も見てきました。
ブログとしては長い前振りでした(涙
たいていの職人さんたちは照れくさそうにしていて、それでいて更に丁寧に作業をつづけるのです。(そこまで手間かけんでもと思いつつ
私のお客様である住宅会社の現場監督さんや設計士さんや営業さんからも評価を頂き、それをまた職人さんたちに伝えることで相乗効果が生まれます。
こうして我々は、少しづつお客様からの信用を勝ち取っていき、やがて住宅地開発の分譲事業にタイルを取り入れた街並み作りへと、しごとのステージが広がっていきます。
その後、事業は急速に拡大していきます。
とても順調に思えていた日々に、大きな落とし穴が待っているということを、このときは まだ気づくはずもないままに・・
6000文字超えました まさに著者と読者のデットレースですね!
ここまで読んで頂いて感謝しかありません!!
ブログの新しいネタを考えたので、そろそろこのシリーズを終わらせたいのにまだ30代か・・(汗